こんにちはメガネのイザワ 伊澤康一郎です。
さて、今日は白内障を手術した後のお話です。
白内障は、医療の進歩によりかなり高い精度で手術が可能になってきました。
白内障とは眼球の中の調節機能を司る部位のひとつ、水晶体の白濁によって起こります。
この無色透明なレンズが加齢やその他の要因により白濁してしまうことを白内障といいます。
一度白濁したレンズはもとに戻ることはありません。
私が業界に入る少し前までは白内障手術と言うと「水晶体摘出術」と言う方式が多く濁ってしまった水晶体を取り除いてしまうと言う内容でした。
しかし屈折力を持ったレンズを外してしまうわけですから、その分の足りなくなった屈折を何かで補わなければなりません。
眼鏡でそれを補う場合は強度の遠視レンズで補いますが、一般的な遠視度数よりも更に強い度数のためキャタラクトレンズというものを使います。
そんな方法が一般的でしたが、その後すぐ(それでも20年前位)には「水晶体再建術」と言って水晶体を摘出して人工の眼内レンズというものを入れる術式が定着してきました。
人工のレンズはもともとの水晶体と同じ約9ミリほどのレンズに入れ替えますが、そのレンズはハードコンタクトなどと同じ様な素材で作られていたため9ミリ以上角膜と強膜の境目あたりを切開し挿入していました。
その頃の手術は傷口が広いこともあり術後、度数や傷口が安定するまでに3ヶ月くらいは安静、様子見と言うのが当たり前でした。
しかしその後、術式も進化して折りたたみ式の眼内レンズの登場とその他の器具の改善により現在の切開する傷口は1.8ミリ位とのことです。
傷口が浅ければ当然術後の治りも早く、度数の変化もある程度、想定するものに近づけるようになってきてるんだと思います。
白内障手術をされたお客様を多く見させていただいていますが本当に精度が上がっていると実感します。
ただ、近視や遠視の屈折度に関しては計算上想定する仕上がり度数を調整できますが、どうしても残ってしまうのは角膜にある乱視です。
遠視、近視、乱視の屈折力と言うのは角膜屈折力、房水、水晶体屈折力、硝子体、眼軸長(網膜までの距離)それぞれの要素が合わさって作られます。
乱視に至っては方向性があるため、現状眼内レンズではほとんど補正が出来ないため、もともと角膜にある乱視が全面に出てくることがほとんどです。
もしかしたら執刀医のテクニックで角膜乱視をある程度打ち消す切開方法や切開位置などの工夫はされているかもしれませんが、「白内障手術後に乱視も含めて完全に矯正されている」と言うことは殆どありません。
それでも今まで眼鏡が必要だった方は手術前よりも確実に眼鏡なしでも見えるようになっているので「もう眼鏡いらないや!!」と言う感覚にはなる方が多いです。
単純に例えば5.00D合ったものが1.00Dになれば「良くなった」と感じると思いますがそれでも1.00D残っていればまだピントのズレは存在しています。(遠視、近視、乱視の分類はここでは割愛)
その点でも術後に眼鏡が合ったほうがより「楽に見える」「よく見える」ようにすることが必要なケースも多々存在します。
そしてもう一つ重要な事はそもそも摘出してしまう水晶体は「調節力を司る部位」です。
人工レンズは流石に調節力までは作ることは出来ません。
白内障適合検査の際に、お医者さんに「遠くを見えるようにしたいですか?近くを見えるようにしたいですか?」と聞かれるケースもありますし、様々な要因を配慮して医師が決定するケースもありますが、基本的には正視に近づけるか?近視を残すように(近く見やすい様に)を調整します。
どのように調整しようとして、結果としてどのくらいの度数に落ち着いたかによって対応は異なりますが、調節力が基本的にはなくなったわけですから、遠くを合わせた場合は近くが見えにくくなるし、近くを見えやすくした場合は遠くが見えにくくなります。
その点からも術後の眼鏡はやっぱり必要なんです。
最近では遠近両用タイプの眼内レンズというものもありますが理論上「遠くも近くも見えるようになる」と言ったものですが、間違えてほしくないのは「今までと同じようになるわけではありません」
現在私が知る限りの遠近両用タイプの眼内レンズは同時視型と言って一つの視野の中に複数のピントを作ります。
その複数のピントの中から頭の中で自分が見たいピントを見ます。
ソフトコンタクトレンズの遠近両用タイプを使いこなしている方ならば比較的入りやすいと思いますが、コンタクトもしたこと無いはじめての方がこれをやるとだいたい戸惑います。
非常に説明が難しいのですが、見え方で例えるならば
野球をネット裏で見に行った時にネット越しに選手のプレイを見ている時にネットが気になりだして、観戦に集中出来ないと言ったような感じだったり。
音に例えるなら
雑音がある中での会話もそんな感じかと思います。
ざわざわした中で友達と話してても雑音に聞きたい言葉がかき消されたり、かき消されるほど大きくなくとも聞きたい言葉に集中出来ない。
そんな感覚を持つ方もいらっしゃいます。
しかも、遠近両用眼内レンズは保険適用外になる事がほとんどで、稀に生命保険の特約等で賄える事もあるみたいですが、高額なレンズを自己負担して「思ってたのと違う」と言うケースを散見します。
私個人の感想ですがよほどの遠近両用タイプにしないといけない理由がない限りはおすすめできないかなぁと思ってます。
絶対眼鏡で矯正したほうが条件としては良いです。
これはコンタクトで遠近両用タイプを使いたいとおっしゃる方にも同じことを言います。
ちょっとタイトルとそれはじめましたが、白内障手術が進歩しても、少し前に流行った近視矯正手術(レーシック等)が進歩しても、屈折矯正としての眼鏡はまだまだ必要だと思います。
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